デイサービス介護スタッフの「これが現場の生の声!」
今回のテーマは、「認知症の方とそうでない方の接し方」です。
私が働く民家活用型のデイサービスは、3分の2は女性の利用者です。
そして、日中お過ごしいただくフロアはそれ程広くなく、認知症の症状のある方、そうでない方がともに一日を過ごされています。
今の時代と違い、殆どの方が家を守ってきた専業主婦で、掃除や洗濯、料理などは日々当たり前の事の様にされてきていました。ただ、歳をとり、若かりし頃とは違い、動きにくく、見えにくく、判断力もだんだんと低下し、「私がしますから、お母さんは何もしないで下さい。危ないから」と、長年自宅でしてきたことが、させてもらえない状態となりました。
だからでしょうか。
「私がテーブル拭きます」と積極的に手を上げて下さる方ばかりで、職員がお願いした事に対して取り合いが始まります。
そんな昼食前、決まって聞こえてくる言葉は、
ご利用者 「私、帰ります」。
介護スタッフ「昼食をご用意しています、せっかくだから食べて帰ってくださいね」
ご利用者 「いいの?うれしい」
しかし、伝えた言葉に対し、数秒でお忘れになるので、帰りたい気持ちをそらす為にテーブル拭きなど、昼食準備を一緒にお手伝い頂く様にしています。
介護スタッフ 「お腹がぺこぺこ。早く食べたいから手伝って」
ご利用者「いいよ」ニッコリ笑顔。
帰りたかった気持ちから食べたい気持ちに変わる様、誘導します。
また午後からは、
テーブル拭きは〇〇さん。お盆拭きは△△さん。□□さんには洗濯物を干してもらい、◎◎さんには洗濯物をたたんでもらって。あちらのテーブルの方々にはこれをやってもらいましょう、と。
作業を提供する順番も決めておきます。提供する物と順番を間違えると、「やりたい気持ち」でいっぱいの利用者は、されようとしていた方の作業を取ってしまうのです。
介護スタッフ「洗濯物を干してもらえますか?」
ご利用者A「どこに干すの?」
ご利用者B「私も手伝うわ」
ご利用者C「貸して下さい。私がします」
ご利用者B「大丈夫。私がしますから」
昔、喫茶店のレジ前で見たことがあるような、「私が払います」「いいえ、私が払います」の「支払い合戦」の光景。それとどことなく似たような感じのやり取りが続きます。
そのうちお一人の利用者がイライラし始めます。
「貸して。その干し方だときちんと干せない!」
きつい口調にその場にいた利用者はご自分の席に戻られ、やり方が否定されたと落ち込んだ表情を見せました。
ところが、少し時間が経つとお互いに忘れたように仲良く話されている姿があります。
同じフロアで過ごすことで、もやもやとした気持ちであったり、笑顔になる楽しさがあります。
そのような心情が交差しながら、今日も作業の取り合いが始まろうとしています。