固定費の削減「経費削減の考え方」

介護事業所に限った話ではありませんが、

備品の扱い方で上司や先輩に怒られたという経験をされた方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?

その際によく耳にする言葉として、「会社の備品も私物同様に大切に扱うように」というワードです。それに対して「経費を管理するのは、経営者や上層部の仕事」、と思われていませんか?

仮に1つの無駄を一人ずつ発生させてしまうと、経営者上層部より人数の多い現場スタッフの方がその影響力は大きいものです。一方で、減らすことができた際の効果も考えるとスタッフ一人ひとりが他人事としておけないことが分かりますね。

ボールペン1本でも、『自分のお金を使って買った物』と、『会社に行ったらそこに備えられている物』を同様に扱えという方が無理があるのかもしれません。それでも「私物同様大切に扱ってます!」と断言できる方がいらっしゃればそれは大変素晴らしいことで、それが正解なのです。

その理由は、会社の備品を大切に扱い、無駄な消費を減らす、無くす事が自身のお給料に影響するからということを知っておきましょう。

会社と家庭を比較してみましょう

介護事業所単体の会社の場合、その売り上げは、利用されたお客様の介護報酬と一部負担金(利用料)で構成されます。その売上から、事業所の家賃や光熱水費、燃料費、文房具やコピー用紙等の消耗品類を支払い・購入していきます。そして、最も目に映る経費は職員に支払われる人件費です。

これを家庭に置き換えてみましょう

・売り上げ=お給料

・事業所における諸経費=家庭での出費

・人件費=お小遣いや、貯蓄

と考えましょう。

よく、テレビドラマやアニメのシーンで、電卓をはじきながら家計簿とにらめっこして、

「今月は苦しいからお小遣いカット!」なんてセリフを聞くことがあります。

逆に、「今月は電気代が安く抑えられた」もしくは「臨時収入があった」、「ボーナスが入った」、そんな時は、臨時のお小遣いアップや、その分で家族旅行、前から欲しかったものを買ったり、普段利用しにくいちょっと贅沢な食事に行くこと等があるのではないでしょうか?

会社の売り上げに対して、お給料は残業手当等多少の変動を除いて、ほぼ固定された収入を得られます。その結果、先ほどご紹介した比較を意識しにくい環境であることは否めません。というのは、『1枚コピーをし損ねて紙を無駄にしてしまった』途端にお給料が減ることはないですね。しかし、それらの無駄や備品の取り扱いによって起こる修理や損失によって思わぬ臨時出費が積み重なると・・・。会社の経費は増えていきます。

介護業界は、その多くは定員が定められており、事業所の売り上げが前年の2倍、3倍なんてことにはなりにくい環境です。

収入が仮に同じと考えた場合、経費が増えるとどこで調整するか。『お小遣いカット!=人件費』になってしまいます。賞与で考えればよりリアルにイメージできると思います。年2回半期ごとに支払われる場合、前半年の業績に応じて支払われます。大前提として売上が重要な要素になりますが、仮に売り上げが好調な半期だったのに、賞与は減っている、という現象はもしかすると経費の面で少なからずの影響があったのかもしれません。

逆に無駄な経費を徹底的に削減した結果、出費が随分少なくなったという場合、働く職員に還元される要素になることは言うまでもありません。ただし、会社は長期的な視点で経営をしていく必要があります。例えば建物の修理や車等の大きな備品の入れ替えを計画的かつ長期的な視点でおこなっていく結果、必ずしも半年という期間だけですべてが反映されることはありませんので、その点はご承知おきください。

多くの方に事業所をご利用頂く=売り上げを獲得するための意識も大切ですが、得られた収入を無駄なく大切に活用し、自分たち職員や、大切なお客様に還元される要素を少しでも残していく、という視点も忘れずに働いてみましょう。

お客様により楽しい盛大なイベントを提供できるかもしれません。やってみたい仕事をする機会が増えるかもしれません。

きっと前向きに仕事する自分が見えてくるでしょう。

この記事を書いたのは

介護ライター。社会福祉士・ケアマネジャー。現在はデイサービスを経営する代表取締役社長。20年以上、介護老人保健施設に勤務。主に相談業務や施設運営に携わってきた経験。介護現場の実情や社員の教育から会社運営まで、幅広い記事を担当する。