介護士のイライラ~ついカっとなった~

デイサービスでは朝、各方面に車両で利用者を迎えに行きます。小さな事業所は職員全員が利用者のお迎えで出払っていることがほとんどで、先に戻ってきた職員が施設の鍵を開ける所から始まります。

送迎車から降りると一人で室内に入れる方もいれば、介助が必要な方もいます。先に入られた方は「テレビをつけて!」、「お茶が欲しい!」等々。ようやく椅子に座られた方は「私のカバンを持ってきて!」との声。あれやこれやと段取りよく行っているつもりですがそれなりに時間が必要です。頭をフル回転しながら動いている最中に大きな声で「早くしてよ‼」と言われると、『今の状況わからない?ただ少しくらい待つことできない⁉』とイラっとすることがあります。こちらもつい口調強めに「すぐに対応します!少しだけお待ちください!」と返し、ようやく少し落ち着いた後に『きつく言ってしまった』と落ち込んでしまう事があります。

デイサービスで働いていると、普段外出している先でも高齢者の方を目で追う事があります。『歩いてここまで来たのだろうか』『一人であの荷物を持って帰るのだろうか』と、要らぬ心配を勝手にしてしまいます。

先日、支払の為レジに並ぶと前には高齢の男性。並んだレジは店員が商品の計算をしますが、支払はセルフレジ。男性は店員に「〇〇円です」と告げられお金を渡しますが「こちらで支払って下さい」とお金を返されています。繰り返しお金を渡そうとする男性に店員は「そちらで支払って下さい」とだけを繰り返しています。私は同じ言葉だけを繰り返す店員の対応に少し腹立たしく感じていました。そのうちようやく気付いた男性はおかれたお金を持ってセルフレジへ。私はどうすればよいのか分からない様子の男性に声を掛けました。

「現金で払うのならまずここを押してください」

「お札はここに入れて、小銭はここに入れてください」

「よければここを押して清算して。おつりはここから出てきます。レシートはここです」

と説明しながら支払いを終えることが出来ました。男性は「助かりました。ありがとう」と会釈してくれました。

どんどん普及されているセルフレジですが、タッチパネルなどが無かった時代の人はどうすればいいのか使い方が分かりません。店員もレジ待ちの列が長くなることに焦っていたのだと思いますが、もう少し相手を思った言葉かけがあればよかったのにと思いました。

アルコール中毒で入院歴のある男性利用者。デイサービスの利用でない日に毎回施設に電話を掛けてきます。

「今もう店の前や。どこかわかるやろ?今日も頑張ってくるわ」

パチンコの開店時間前に自身の所在をお知らせしてくれます。それだけならいいのですが、パチンコ店の横のコンビニで朝からお酒を何本か飲んでいるようで、何とも陽気な口調。それから2,3時間後。どうやらお酒の量がさらに増えているようで、呂律が回らない状態で電話を掛けてきました。

「おーい、仕事頑張ってるか?まだパチンコしているけど、今日は調子いいみたいやからまた酒飲んでるんやぁー」

「今度一緒にご飯食べに行こうよー。何たべにいこうかぁー」

店内の賑やかな音と口調で話されている内容もはっきりと聞き取れません。

職員 「ごめんなさい。何を言っているのか聞き取りずらくて分からないです。」

利用者「何?わしはちゃんと話をしてるのに、何が分からないんや‼」

しばらくこんな会話が続いた後、

利用者「なんや?もうええ‼」と突然電話が切られます。

相手が利用者でもさすがに腹が立ちカっとなります。

酔いがさめると電話の内容は一切覚えておらず、何事もなかったようにまた利用されています。それからもこのような電話が繰り返し何度もあります。その度に嫌な思いをしてきましたが、『お酒を飲んで寂しくなったのかな?』と感じ対応することで私自身、腹を立てる事が無くなったように思います。

「年はとりたくない」と利用者がよく言います。

「昔はいろいろできていたのに、今は何にもできなくなってしまった。迷惑ばかりかけている」と、ご自身のしわしわの手をさすりながら話されます。そして「もうそろそろお迎えが来てくれないだろうか」と続けられます。

歳と共に身体の機能は衰え、日々変化する時代の流れに取り残されて寂しい気持ちがあるようです。目に見える身体的なところと目に見えない心理的な面。利用者と関わる中で、私自身忙しさや体調に左右され、言われた一言でイラっとしてしまう事が少なくありません。しかし、私たちが経験するにはまだまだ先の利用者の気持ちは、日々関わる中で少しでも理解することはできます。言われる一言の背景にどんな想いがあるのか。利用者の気持ちを思うと、怒りも怒らず笑顔で対応できるようになるのです。

この記事を書いたのは

介護ライター。介護福祉士・社会福祉主事・認知症ケア専門士。デイサービス、小規模多機能型居宅介護、介護老人保健施設などで20年以上働いてきた経験、現在は民家改修型の地域密着型通所介護管理者。介護現場の実情や日々の利用者とのふれあい、また認知症に関する情報を発信。