管理者ってどんな人?
介護サービス事業所には、サービスの種類を問わず管理者が配置基準に求められます。文字通りその事業所を管理する人。どんな人が管理者になれるのでしょうか?
実は管理者には資格要件がありません。看護職員は主に正看護師または准看護師、相談員は社会福祉士または社会福祉主事、私の住む兵庫県姫路市においては介護福祉士も加わり、そのいずれかの資格所持者でないとその仕事に就くことはできません。管理者は、その事業所に属した常勤職員であれば管理者になれるのです。しかしこれは資格要件の話であり、その事業所を管理する大切なポジションが素人で良いわけはありませんし、それで職務が遂行できるわけもありません。
往々にしてその事業所でスタッフとして一定期間の現場経験を積み、その評価が高い人が任命される、というのが一般的でしょう。会社が任せられないと思いながらその職務に就かせることはよほどの緊急事態を除いては考えられません。
管理者の悩み
それだけの評価と期待を受けながら、実際の管理者は日々悩みを抱える人も少なくありません。
介護現場での管理者は部下の育成・指導担う役割と、売上に貢献する現場の「プレーヤー」としての役割の両方を共に担うポジションになります。事業所の規模が小さければ小さいほど、それに当てはまる可能性は大きくなります。管理者の立ち振る舞いについて線引きをすることが難しい環境といえます。
また、育成に関する書籍やセミナー等をのぞいてみると、『現場の仕事はピカイチだったから上に立たせてみたものの、まったく機能しない』という悩みが見出しに描かれていることがあります。そして、任せられた当事者からも「自分は管理者に向いていない」「会社の指示で仕方なく職務に就いている」と言われることも。
理由は、役割が今までの一職員時代と同じではないにも関わらず、就任前の評価を期待され、評価されなくなった管理者は自信を失っているのです。
育てる環境と管理者の姿勢
例えば、板前さんが誰よりも綺麗に早く食器を洗い片付けたとしても、その人のお料理が絶対に美味しい、とは限らないですね。実際に調理を始める際にはそれなりの指導と修業がなされてやっと調理に携わるプロセスがあります。
会社は新入社員が入社したときには、ある一定の研修や指導を行いますが、果たしてベテラン職員が管理者になる際にどれだけその育成に力を入れているでしょうか?
当事者も、管理者を任せられた以上、いままでと同じ仕事をしていてよい、と思う人はいないと思いますが、管理者として具体的に何をするべきか分からないまま、自身の価値観で仕事をしていることはないでしょうか。管理者として何を求められているのかを追求していくことが必要です。
管理者のするべき職務職責を明確して、管理者に何を期待するかを当事者に伝える、そして当事者が理解して職務に就く手順を踏まえるのが理想の形です。
管理者・リーダーの役割
管理者は、少なくとも自分が率先して現場業務をこなすことが役割ではありません。自身が現場のスタッフから抜けた穴を埋めるべく、後任を育成することが管理者の役割になります。加えて、会社の理念や方向性を示し、スタッフが同じ方向・目標に向かっていけるよう、時に決断し、まとめることがリーダーとして求められます。
管理者の考え方・心構え
管理者として悩まれている方に伝えたいのは、管理者がすべてにおいて部下より優れている必要はないということ。
管理者と言っても一人の人間です。管理者になった途端、二人分の仕事ができるわけではありません。ならば新しい職務が増えた分、今までしていた現場業務をすべて賄えるわけはありません。それだけで考えても現場業務は部下スタッフの経験値がいずれ上回り、詳しくなるのが自然であり、むしろ望ましいのです。
その考え方が部下であっても相手を敬うことにもつながります。そして立場に関わらず共に働く相手を敬う言動こそが、『ついていきたいリーダー』の立ち振る舞いにもつながるのではないでしょうか。
2022.8.18